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[読書] 失われた町

読書

三崎亜記の失われた町を読んだ。
失われた町(三崎 亜記)
三崎亜記といえば、『となり町戦争』で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。二作目の『バスジャック』も好評の期待の小説家、とのことですが、正直あまり好きじゃありませんでした。『となり町戦争』は現実感のなさばかりが目立ってイマイチだったし、『バスジャック』は発想のユニークな不思議なストーリーを抑制のきいた文章でつづる独特の世界観はまぁ面白かったが、ツッコミが足りなくてふざけてるだけじゃん、と物足りなさも感じていました。

で、初の長編という本作はどうか。
結論から申し上げると、大変面白かった。

「町」が消えるという着想自体が奇抜でユニークだが、そこにありったけのリアリティを感じさせるための精巧な舞台設定。奇抜な発想だけに頼らずに、違和感や矛盾のない現実感たっぷりの世界を創りだしたという点においては、現実世界から見えないところで事件が進むというリアリティのなさを描いた『となり町戦争』とはアプローチが真逆でしょうか。矛盾のない世界観を創り出して提示した点において、現代(あるいは近未来)版のファンタジーともいえるでしょう。
7つのエピソードをエピローグとプロローグで挟むという構成も成功していると思われます。1つ1つのエピソードが有機的に絡まりあってひとつの長編として構成されていく手法は、まぁ、ありがちなんですが、序章の「プロローグ、そしてエピローグ」で提示されたキーワードをそれぞれのエピソードで紐解いていく丁寧さがうれしいし、登場人物ひとりひとりの物語もきちんと描ききっている点において、1つの短編としてしっかり機能していると思われます。
主題は「町」の消滅という理不尽で得体の知れない巨大な力に、(たとえ自分を犠牲にしても)信念を持って立ち向かっていく人々を描きました、ってところなんでしょうが、こういうテーマにありがちな「はかなさ」とか「うつくしさ」というのは希薄で、むしろ「たくましさ」「力強さ」「前向きな明るさ」というものを感じました。
久しぶりに勇気を与えてくれる本に出会いました。
ただ、やっぱり文章は稚拙だし、「澪引き」のエピソードはストーリー展開にややムリがあったんじゃないか、と思ったり。

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